昔の日記からサルベージ

なあギルバ。あんた自分の事何にも話さないよな。それが悪いなんて言っちゃいないよ。誰にだって話したくないことも話すべきじゃない事もあるさ。俺にだってあるからな。え、知りたくもない？そりゃねえぜ。秘密が多い男はミステリアスで惹かれるだろ。そんな事ねえよ。なかなかヘビーなんだぜ俺の秘密はさ。だから！立ちんぼに振られ通しとか違うっつってんだろ！誰だよ吹きこんだ奴！あーやっぱりか。次の仲介絶対受けてやんねえ…あっ待て！聞けって！こんな話じゃなかった筈なんだ！だから席立つな！俺の秘密の話？違うって。それよりずっと大事な事だよ。減らず口はよしてくれ。今夜は俺も言わない。さっき言った？あんなのカウントに入らねえよ。悪かった！だから黙って席立つなって！…あんた結構短気だよな。ああもう一々怒るなよ。俺告白するつもりで来たんだぜ。いつもみたくチャラい事言わない。ギルバ、あんたが好きだよ。初めて見た時からさ。すごく懐かしい気持ちになったんだ。変だろ。あんたとは初めて会った筈なのにさ。あんたの言葉一つ一つが凄く懐かしい。でもそれだけじゃないぜ。その懐かしい感じを抜いても好きなんだ。上手く言えないけど、きっと理由なんて必要ないんだ。説明なんて後からいくらでもできるだろ。あんたに会えて良かった。こんなの初めてだ。ずっと一緒に仕事したいよ。あんたとならもう選ばない。俺があんたを選んでるからさ。俺はあんたの事何にも知らねえけど、あんたの顔も、もしかしたら本当の名前だって知らないかもしれないけど、そんなのどうでもいいんだ。あんたが目の前にいる。それが全てさ。なあギルバ。あんたが大事だよ。俺の秘密と同じくらい。俺の過去と同じだけの価値を持つものができるなんて考えもしなかった。ギルバ、あんたが好きだ。もしあんたに裏切られたとしても恨まない。憎んだりしない。あんたがする事を憎んでもあんた自身を憎めないんだ。当然だろ。好きだよギルバ。



あんたが悪魔だったとしても、あんたが好きだよ。




無色の酒が入ったグラスを置いてギルバはトニーを見た。
待ち構えたようにその手をかすめ取り、トニーは甲にキスをした。包帯越しであっても彼は満足だった。
ギルバはそれを振りほどかなかった。

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そろそろ過去ブログが消滅しそうな気がしたので一冊目が出た頃のトニギル小話を拾ってきました。
でも時系列では２冊目と３冊目の間だねこれ。(ギルバが手に包帯巻いてるから)
見覚えある方いるかな？

前にも書きましたが、小説１と３はそれぞれ別経路で１に繋がっているという前提で色々やっています。
小説１は質内容共に最高！なメディアミックスだったはずなのに、３の発売によって重要性が薄れたところが悲劇であり魅力だよなって思います。寂れた雰囲気があの場末の酒場にぴったりじゃないか！