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Posted by 安奈 - 2008.10.27,Mon
俺っちの名前はエンツォ。エンツォ・フェリーニョ。
何となくど派手な車を連想するだろ。あの高級車を乗り回すのが昔っからの夢なんだ。
俺っちが目を掛けてるあいつさえ、もうちょっと仕事の選り好みをしなければ明日にだって手に入るのにな。
今日は火曜、儲け話をどっさり携えて穴蔵へ向かう道すがら、繁華街から一本奥まった汚ねえ路地に差し掛かったところだ。
今目の前にいる黒服集団。
この鼻先に突き付けられた黒い塊。
待てよ待てよ、恨みを買った覚えはあるが、こんなケチな情報屋、この界隈にはうなるほどいるぜ!
「情報屋のエンツォ・フェリーニョで間違ないね?」
隊列を組んだ黒服の合間から、エージェント・スミスばりのオールバックが進み出た。
「ま、間違ねえけどよ。あんたらなんだい。俺っちを敵に回すとここらの便利屋達が黙っちゃいないぜ?」
「それは怖い。しかし我々にも正当な理由があって、君に協力を仰ごうとしているのでね」
「コルト突き付けて言う台詞じゃねえだろ!」
精一杯のはったりも鼻であしらわれた。
拉致って別の場所でコンクリートに詰める気だな。チクショウ!
「観念したまえ。君は機密漏洩の嫌疑で我々に拘束される。言い訳は後で聞こう」
「機密漏洩!?」
自慢だが、俺っちは仲介の仕事に関しては秘密遵守、一度だって口を割った事はない。
「そりゃ、人違いだぜ旦那。それか漏らしたのは別の誰かで俺っちは潔白だ」
「いいや、君に間違ない。大人しく従ってもらおう」
連れて行け、とスミスが指示したのと、路地に人影が現われたのは同時だった。
背の高い、細身の人影。影になっているが分かる。スーツを着ている。黒服連中のとは違う、もっと地味だが鼻につくくらい上等な造りの。
包帯に覆われた顔がこちらを見た。暗がりで光るような眼と目が合った。
「ギルバ!依頼だ!俺っちを助けてくれ!!」
言い終わらない内に目の前の拳銃が真っ二つに割れた。顔に温かい液体が跳ねる。むっとする鉄臭さに殺したかと思ったが、銃を構えていた男は右手を押さえて蹲った。
首がいきなり圧迫され、身体が浮上り視界が遮られる。自分の首に巻いてたスカーフだ。
一斉の発砲音に耳の奥がキンと鳴った。

「痛て!痛てえよ!」
首の圧迫と浮遊感はそのまま、銃声はどんどん遠くなる。時々あちこちにぶつかっているようで堪らなく痛い!顔に纏わりついていた布が飛ばされ、状況が把握できた。
ギルバは俺っちの襟元を横から掴み上げ、屋根の上を走っている。
お世辞にもスマートとは言えない俺っちを片手で摘み上げ、いつの間にか路地から20メートル以上高い場所にいる。おまけに屋根伝いにまだ走るつもりらしい。
あいつといい、こいつといいどんな身体の構造をしてんのか。
「ど…どこまで行くつもりだよ」
声を絞り出して問い掛けると、ギルバは一瞥していきなり手を離しやがった。
斜になったレンガの屋根に放り出されて、滑り落ちそうになるのを両足で踏ん張る。
見上げると穴蔵で見掛けるのと同じ、いつも通りの包帯野郎が今来たらしい方角を見見つめている。追っ手の気配を探っているんだろう。
こいつのこういう様子は初めて見るが、流石にサマになってると感心した。流石、あのトニーの新しい相棒だよ。

続くかもしれない。


普段文章書かないので細かいところは見逃して下さい…それ以前のレベルでしょうが
記事に書いたらなんか盛り上がってしまった。妄想上でもうすぐオチも付きそうです。
どちらかっていうと活字より漫画の方がやり易そうだ。ってかシリアスよりもギャグよりも、こういうエセ冒険物(?)の方がどうでもいいコマまで構図がポンポン出て来るミステリー。
小説1ってこんな雰囲気の一話完結系の連載やったらきっと嵌まると思うんだ!お願いカプンコ様!

エンツォって何かに似てるな~って思ってたんだけど、浦沢漫画に出て来る脇の三枚目っぽいんだなって思い至りました。
キートンさんの相方(名前忘れた)が近い気がする!彼が美人局もどきに引っ掛かりそうになる話が面白かったなー
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