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Posted by 安奈 - 2014.03.26,Wed
ドラゴッンッボーオルー
昔書いてた妄想走り書きの微修正と飽きるまで適当に書きます。
カカロット・プログラム通り帰還IF

アラームが鳴っている。緩やかに覚醒しながら手元のタッチパネルに触れた。小さな電子音と共に管制塔との通信が始まる。ノイズが酷いのはこのポッドが破棄寸前のオンボロだからだ。
管制官は手短に軌道を告げ、一方的に通信は途切れた。合理的だ。つまりは収容されているものに意識があるかを確認するためのやり取りにすぎない。応答が無い場合、彼のような下っ端兵はそのまま「ゴミ箱」へ誘導される。
長方形の窓から白い惑星が見えた。それは地表を隈なく覆う城壁の色だ。
近づくにつれ丸みを帯びた建造物のシルエットと米粒のような人影が見えた。申し訳程度に生えた樹木は貧相な枝を伸ばしている。見慣れた眼下の風景を苦々しく思う。ここはオレの星じゃない。
帰還信号を受けて着地予定地点がぱっくりと黒い穴を開けた。
あとは自動制御だ。次にくる筈の衝撃にカカロットは身構えた。

「ひでえ目に遭った」
ひび割れた装甲を兄に投げつける。ラディッツは慣れた様子でそれを受け止め振り向きもせずクロークを開けた。戦闘力は自分より上なのに甲斐甲斐しく世話を焼くのはいつもラディッツの役目だった。カカロットに限ってではない。同胞全てに対してのその様子に苛立っているものがいる事に彼は気付かない。
「あんな数値の高い奴いるなんて聞いてねえぞ。あんたはともかくなんでターレスとかが行かなかったんだよ」
「たかが知れてるだろう。あの程度の星、制圧できないでどうする」
バタンと乱暴に扉を閉め、真新しい戦闘服を突き出した。
「いいか、お前はサイヤ人なんだぞ。いい加減その自覚を持て」
「持ってるさ。オレだってもっと強くなりてえよ」
なのにちっとも強くなんねえ。口を尖らせながらやはりボロボロのアンダーウェアを脱ぎ捨てる。まとめてダストシュート行きだなとラディッツが呟いた。埃っぽさと生臭さに顔を顰めている。あの星の住人の血は酷い臭いだった。
バスルームに入ると兄の叱責が追ってきた。ちなみに今回は五日のオーバーワークだ。それには耳を塞いでコックを捻る。ざっと流れた水に掻き消されて後の言葉は聞こえなかった。

カカロットはサイヤ人の中で一番弱い。顔を合わせるのが五人しかいないため優劣は簡単に評価できた。
惑星べジータは巨大隕石との衝突で消滅し、故郷を離れていた彼らだけが生き残った。今は名目上の同盟相手であったフリーザ軍へ帰属している。名目上、というのは実質支配を受けていたためだ。拠り所をなくし、当時も手足となって働いていた事実からごく自然な流れで現在に至る。
カカロットは所謂星送りの子供で、地球という小さな星を制圧し、5年後惑星べジータの爆発跡地付近でフリーザ軍の宇宙船に発見され、収容された。身柄を引き受けた兄のラディッツは開口一番「何て弱さだ」と項垂れた。
当時の事はことある毎に引き合いに出される。おまえ、あの時俺がどんな気持ちで王子のとこに行ったかわかるか!こいつぜったい殺される、下手したら俺まで殺されると思ったんだぞ!
生き残りに王族がいた。幼少の頃からの高い戦闘力を買われ、フリーザの手元に預けられたべジータ。
彼は強さだけの尺度を持っていた。弱いものには目もくれない。よって、カカロットはあしらわれた。
戦士の身体をした少年は片目にあてがわれたスカウターの数値に舌打ちし、言葉も掛けずに踵を返した。
ラディッツは長い安堵の溜息をこぼし、隣にいたナッパが笑った。坊主、命拾いしたな。
その後、ターレスが合流し、サイヤ人はフリーザ軍の最前線で働き続けていた―――表面的には。

「いつになったらまともな戦闘力になるんだ、えぇ?」
べジータの手の中でスカウターが軋んだ。
帰還したカカロットの戦闘数値を測るのは半ば恒例となっている。見事なほど、伸びない。
「なぜだ!」
死に掛けるのも珍しくないのに!言われてカカロットは後頭部を掻いた。
決して訓練を怠っているわけではない、むしろ戦いに関しては人一倍勤勉だと言っていい。
それでもようやく兄の戦闘力に近づいた程度だった。
「オレもなんでこんなよわっちいままのか分かんねえんだよな」
「考えろ、異常だ。サイヤ人としておかしいと言ってるんだ」
今にも掴みかかりそうな勢いでべジータが吼え、バチンと彼の背後で空気が爆ぜた。
衝撃で歪んだ金属製のパイプを一瞥してからナッパがカカロットに何とも言えない視線を投げる。
「ターブルん所に、護衛として行くのも悪くねえかもなあ」
呟いた一言にべジータの眉尻が跳ね上がった。

その後、ナッパは容赦ないベジータの気弾を受けメディカルマシン送りとなった。
回復すればまた戦闘力は少なからず上がっているだろう。理不尽な暴力を彼らは意に介さない。それよりも、まったく得な体質だと各人は思っている。
信じられないような事実として、ベジータはカカロットの事を買っている。
戦場を離れれば少々陽気すぎるきらいはあるが、その「戦闘」においてのサイヤ人らしさは両手以下の数となった同族の中でも際立っていた。
いつか爆発的な能力向上の機会があるのではないかという期待があった。
ベジータ程ではなくても、ナッパに次ぐ位にはと。
下級戦士でも戦闘力1万に肉薄する戦士は居た。カカロットとラディッツの父もまたその一人であった。
あのバーダックの息子ならば、或いは…その可能性はどんなに低いものであってもこの状況下で捨てるのは論外である。
個々の戦闘力が上がれば、それだけチームとしての戦略の幅が広がる。
そして、より過酷な戦場を渡り歩き、経験とサイヤ人固有の伸びしろを積み重ね、そして。
そして、フリーザを討つ。
これが、ベジータを筆頭とした生き残ったサイヤ人達の、無言で共有される宿願であった。




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