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Posted by 安奈 - 2014.03.27,Thu
0330修正

出撃命令書に目を通して、ベジータは舌打ちした。
また、個々人での惑星制圧である。
ある時期からサイヤ人同士での部隊編成が避けられるようになり、死んでこい、もしくは強くなるなと言わんばかりの両極端な指令が増えていた。
先日のカカロットの件にしてもそうだ。
人口がそれなりに多く、高数値の個体の確認も取られていた場合、チームリーダーを一人指名し数名の隊員を付けるのが定石である。
サイヤ人の能力を信頼して、などと聞き心地のよい建前のもと、カカロットは非効率この上ない惑星制圧に駆り出されたのであった。
そんな現場ばかりたらい回しにされた結果、弱虫以下のカカロットは必要以上に戦略的な回避が上手くなってしまった。
高数値の個体に対して一撃を与え、逃げ、また攻撃し、逃げ…
オーバーワークになるのも然り。おそらく本人にとっても不本意な戦闘スタイルだろう。
サイヤ人の体質を考えれば、出来る限り避けたい戦法でもある。
またベジータが内心危惧しているのは、回復能力に長けた種族に当たった場合、自殺行為になりかねない事だ。
カカロットは体力的にも秀でているわけではない。持久戦が限界を超えれば結果は明白である。
考えれば考えるほど使えない最下級戦士。
それでも処分されないどころか、ベジータがカカロットを買う理由。
好戦的である事は当然として、戦闘数値に反映されない技術と吸収能率の良さだ。
『おまえ、つええんだなあ』
初対面で、開口一番そう言ったカカロットの言葉を思い出す。
スカウターを付けないまま、周囲の大人には目もくれずまっすぐ自分を見据え、目を輝かせた子供にベジータは内心驚愕した。
機械に頼らず個体の強弱を測れるらしい。それはベジータにとって未知の能力だった。
その後、スカウターほどの精度が無い事が分かり少々の落胆はあったが、地球とかいう惑星で自ずと身に付けてきた技術は今でも役に立っている。
それは圧倒的な戦力差があるフリーザ攻略できっと役に立つ。
力押し一辺倒になりがちなサイヤ人の中では、貴重な存在だと判断していた。
しかしやはり、満身創痍から回復しても、微々たる成長しか示さない下級戦士に苛立って仕方のない事もまた事実であった。

「ベジータ、そろそろオレの命令書見せて下さいよ」
ああ、もう処分してしまいたい方の弱虫が邪魔しやがった。
共有スペースで考え事をしていた自分も悪いが、ラディッツのどうしようもない間の悪さに苛立ちの矛先が一瞬で変わる。
「あとこれ、ターレスが王…ベジータにって」
琥珀色の液体が揺らぐガラス瓶を掲げて「王子」と言いそうになったラディッツは肝を冷やしているのだろう、少し頬を引きつらせて、テーブルの端にそっとそれを置いた。
「王子」という呼称は、惑星ベジータが消滅した後しばらくして止めさせた。
国家を失った王族に身分はなく、フリーザ軍の中ではただのベジータである。
ナッパはすぐに従った。カカロットは最初から馴れ馴れしかった。ターレスはそもそも不遜だった。
だが、よわむしラディッツ。サイヤ人下級戦士層をそのまま絵に描いたようなこの男だけは、いつまで経っても癖が抜けない。
理由を問い質した事があった。返ってきた答えは、民がいれば王子は王子でしょう、だと。
ベジータにとって血統は矜持の拠り所以外何物でもなかったので、その返答は理解の外にあった。
結果、ラディッツは不興を買い、背骨を折られてメディカルマシンに入る事となった。
それはベジータの額を前髪が隠していた頃の出来事で、今は少しだけ分かるようになった気がしている。確信には至らないが。
だから、こうしてうっかり口にしようと、ベジータが居らぬ場所で何と呼ぼうと、重症を負わす状況にはならなくなった。
無言のラディッツに対し、無言で出撃命令書を渡す。
内容を確認したラディッツは、溜息混ざりにまたか、と呟いた。
「ベジータ、オレ達いつになったら親父たちみたいな戦い方できるんでしょうね」
昔を懐かしむような言い方をするな、鬱陶しい。
とは言葉にせず、フリーザ様直々に賜ったお言葉を言ってやる。
「サイヤ人は優秀な戦闘民族でいらっしゃるから、効率よく戦果が上がって助かりますよ。だとよ」
「当面無理って事ですね…ああでも、ベジータとナッパはツーマンセルか」
「フリーザ様の中じゃ、オレはまだ惑星ベジータから預かった大事な王子様らしくてな」
ラディッツの表情が固まる。皮肉くらい笑って流しやがれ。大体いつもの事じゃねえか。
視線は派遣先の場所で止まっていた。高度文明を築いた種族連合とここ数ヶ月競り合っている激戦区が記されている。
ラディッツが参戦するとすれば容易に無残な結果が予想できる戦場だった。
ナッパは元々ベジータの従者としてフリーザ軍に入った。名門に恥じない戦闘力が認められ、ベジータの補佐役として現在もペアが続いている。
ベジータが感じる一番古い惑星ベジータの名残である。最前線での戦闘経験が長いからこそ、ベジータとナッパはフリーザ側としても使い勝手が良いらしい。
これ程度の状況ならば死なんだろう。残念ながら数値を上げるチャンスは無さそうだが。
ベジータは自分とナッパの分を抜き、残り2枚をラディッツに突き出す。
「あいつらに渡しとけ」
ラディッツが見た同じ書式の命令書は、カカロットも帰還したばかりのターレスも、一人で遠足へ行けと宣っていた。









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