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Posted by 安奈 - 2014.03.30,Sun
0330修正

ターレスは生き残ったサイヤ人の中では異色の経歴の持ち主である。
彼はサイヤ人が名実共にフリーザの傭兵だった頃、多くの同族がそうであったように地上げ屋稼業に従事していた。
下級戦士でで取り立てて戦闘能力が高くなかった為、青年期に入ってからもチーム制での行動をした。
目新しい物を好み、雑食と言って差し支えないサイヤ人達が見向きもしないような地産の食料を口にする事を好んだ。当時は悪食と謗られた。
ある日、特別な戦闘も、生死の境を彷徨う事もなく、著しい戦闘力の向上を経験した。
甘ったるい腐ったような臭いの飲料を飲んだ日の事であった。
戦闘数値を絶対視するサイヤ人社会の価値観の中で、ターレスの数値は単独行動を許可される層に潜り込んだ。
次の仕事でターレスは出奔した。
戦う事にしか悦びを見出せない、置かれた状況にも盲な同族にほとほと嫌気がさした結果であった。
彼は自分の頭が良く回り、しかし享楽的な性質である事を自覚していた。
足がつかないように、できる限り故郷から遠い星々を巡り、略奪を謳歌し、美酒と美食と変わらぬ悪食を楽しみ、そして女と遊んだ。
いつからか利害の一致から行動を共にする者も現れ、さながら宇宙海賊のような生活をしていた。
楽しければそれで良かったので、生命の危機を感じれば恥も外聞もなく逃げ出し、戦闘力は出奔時からそれほど変化する事も無かったが、ある噂が彼の心を捉えた。
神精樹の実。
神にだけ口にする事を許された伝説の果実。
惑星を一つ犠牲にし、凝縮されたエネルギーの塊は、一口で膨大な力を与えるという。
強ければ身の危険が減る事は分かりきった事実であるし、その樹木の残酷さも好ましく思った。
ならず者が集まる惑星の酒場で、ターレスはその実を齧る自分の姿を夢想した。
下級戦士という蔑みの対象であった出自。思うように上がらない戦闘力。実質支配を受けるサイヤ人種族。
彼が無視を決め込んでいた、忘れ去ろうとしていた怒りが小さく発火し、野心のようなものが芽生えた。
その後、ターレスの行動は神精樹の実獲得に焦点が絞られる。
しかし銀河の果てを越え、更に別の宇宙に足を踏み入れる事もあったが、一向に見つかる気配はない。
手当たり次第に情報を集めても空振りが続いた。
そしてその日がやってきた。神精樹の実ではなく、故郷について彼は知る事となる。
宇宙船型の情報交換所がフリーザの支配区域から外れて停泊していたので、めぼしい話はないかと物色しに行った時の事である。
腰に巻きつけた尻尾を見て、声を掛けてきた宇宙人がいた。
フリーザ軍から脱退した元戦闘員が、ターレスをサイヤ人と踏んで惑星ベジータの消滅とそのいきさつについて話し出したのだ。
出来る限り故郷から離れる事を意識していたターレスにとって、惑星ベジータの消滅は知る由も無い事であった。
尚且つその原因が、同族全体の雇い主であるフリーザの自ずから行った破壊であった事など。
元戦闘員は明らかにターレスを蔑んでいたが、彼は言葉巧みに、その男が知りうる限りの情報を引き出した。
生き残ったのは数名である。下級戦士2名、中級戦士1名、王族2名、内、第二王子は辺境惑星へ左遷。
フリーザが惑星ベジータを滅ぼしたのは、サイヤ人が徒党を組み、反旗を翻す事を恐れた為である。
そして、フリーザ軍に属するサイヤ人達は当然それを知らない。
ターレスに最も衝撃を与えたのは女が一人として生存確認されていないという事実であった。
好色なターレスには種族を問わない馴染みの女が両手の数以上居たが、妊娠の兆候すら見せた者はいない。
サイヤ人は絶滅する。
同族を捨てたも同然のターレスであったが、その事実が齎す喪失感は彼に大幅な変化を要求した。
神精樹の実を知った時の小さな火種がより大きな炎に飲み込まれるようであった。
その炎は、無知蒙昧だった同族を貶し、未だ盲の生き残り達を罵り、フリーザを破滅させろと慟哭し、サイヤ人を見捨てた彼自身を焼いた。
ターレスは話を聞き終えると元戦闘員の舌を引き抜いて喉を裂き、その場で馴れ合った一派から離脱して、身一つでフリーザの軍門へ下った。
快い歓迎など受けるはずもなかったが、幸い帰属は許された。昔のように過酷で退屈な地上げの日々が待っていた。
遠征の合間を縫うようにしてようやく引き合ったサイヤ人達に、ターレスは彼が知る真実を伝え、同族の価値観が塗り替えられるのを目の当たりにした。
自分の役目がひとつ終わったと、胸の内で密かに笑った。
それは他人も自身をも騙す事に長けたターレスというサイヤ人の、初めて行った同胞への奉仕であった。

そして彼はまた出奔する。
派遣された惑星には誂えたように宇宙航空技術があった。
動作確認した一隻を残して文明を破壊し尽くした後、彼はフリーザ軍から与えられた装備を、さも攻撃を受けたかのように工作して破棄した。もちろん血痕も忘れない。
鼻歌さえ混じえながら、ターレスは揚々と旅に出る。目的地にあるのは彼がずっと求め続けてきたもの。
「灯台下暗しってやつだな」
それはフリーザ支配区域内で見過ごされてきたのだ。
若干の皮肉さも感じながら、神精樹が根付く砂漠の星への進路を戦利品の電子端末に入力した。

ターレスが遠征先で消息を絶った。
地上げで命を落とす者など珍しくもなかったが、サイヤ人を警戒するフリーザ側近達からの指示で派遣された調査兵は、外部から損傷を受けた支給品のスカウターと、大きく破損したフリーザ軍の装甲、そして着地地点から移動した形跡のないボール型宇宙船を発見し、やはり戦死という判断を下した。死体は見つからなかった。
惑星の制圧自体は終わっており、大気等の組成が居住環境に向く事から、さっそくその星は移民希望種族へ向けた競売に掛けられる事となった。
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