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Posted by 安奈 - 2014.03.27,Thu
0330修正

「へえ、じゃあまだ1000にも届いてないのか。顔が似てても分からんもんだね」
ターレスである。
彼は同族の中でも単独行動を好み、命令通りふらっと出撃しては戦果を上げ、お土産よろしく地上げした惑星の特産物を戦利品と称して持って帰ってくる癖があった。
今回はアルコール類に属する飲料である。
原生の果実を発酵させたよくある原始的な飲み物は、カカロットには香りや甘味より、苦味が勝って口に合わない。
大きなガラス瓶に溜められたそれを半分近く手酌で空けたターレスだが、酔いには程遠いらしい。一方のカカロットは1杯目を少しずつ甞めていた。
向かいのソファにだらしなく座っているターレスを見ていて、おや、と思った。
「ターレスは今どん位になったんだ?」
彼は、ふふん、と得意げにスカウターを投げつけ、さあどうぞを言わんばかりに両腕を広げた。
表示された数値は3000弱。以前会った時より100近く上昇している。
「わっかんねえな~!コツとかあんの?」
「さあね。潜在能力の違いだろ」
ラディッツもあまり伸びないしな。お前ら親父じゃなくて母親に似たんじゃないか?
そうかもしれない。カカロットは直に父親に会った事はないが、外見は別としてどうも性格は真逆と言っていいようだ。
寡黙で、冷静で、戦況を即座に分析し、チームの柱として戦場で信頼された父。口と素行は悪かったらしいが。
オレと似てるのは顔だけだろうな~というのが、伝聞でしか実父を知らないカカロットの感想である。
「ところでよ」
出生をぼんやりと考えていたところで、ターレスが話題を変えてきた。
「神精樹の実って聞いた事あるか?」
ない。
「だよな。オレは噂で聞いたんだが、それを食えば信じられないような力が手に入るらしいぜ」
「ただのウワサだろ~?そんな上手い話あったらフリーザが黙ってるわけねえじゃんか」
「そりゃそうだ」
そうは言いながら、ターレスはその噂を信じているようだった。遠征先で根拠になる情報でも掴んだんだろうか。
それとも、戦闘力3000とはいえフリーザ軍内ではやはり下っ端であるところの、儚い夢に縋ろうとしているのか。

前触れもなくドアが開いた。王子宛にターレスの土産を頼んだはずのラディッツだ。
若干青褪めた様子で、手には3枚の紙。おそらく出撃命令書だろう。
よほど酷い星へ派遣されるのだろうか、カカロットは兄の様子を見て、自分が行く星に何者が居るのか想像する。
自分よりも強い相手、どんなに力いっぱい殴ってもびくともしない相手。
そんな存在は比喩でもなく星の数ほど居ると分かっているのに、背筋にぞくぞくとした悦びが這い上がってくる。
カカロットは自分が弱い事を知っている。死がこの場に居る誰より身近な事も理解している。
それでも、さあ戦っていいと言われると、その現実は押し流されてしまう。
それが忌々しく思うフリーザの命令だったとしてもだ。
「ラディッツ、オレ帰ってきたばっかなんだけどさぁ」
うんざりと言い放つターレスに、まあそんな悪い所じゃないからと書類を渡す。
やはり出撃命令だ。
「カカロットはくれぐれも注意しろ。今回は」
自分の派遣先の内容にざっと目を通すと、確かに下手を打ったらまずいと感じる箇所がいくつか上がった。
瞬間移動?そんな能力を持つ種族が居るのか?科学技術だったとしたら、都市を破壊するのは避けなければ。そう考えながら下記項目を見れば同内容の但し書きがされていた。
「王子サマとナッパサンは?」
「二人で地獄行きだ」
ターレスの問にラディッツが手短に答えた場所は、情報映像で見た激戦区。小惑星帯が熱を持ち赤く発光する様は地獄と言われる場所に似ているのかもしれない。地上戦はやれ細菌兵器だガス散布だと、カカロットにはあまり馴染みのない単語が飛び交っていた。
「どうやって戦うんか想像もできねえ」
「エネルギー波で表面一掃が目的だろうな。ベジータご指名って事ぁ」
「え、あそこ文明占拠が目的じゃなかったのか?」
「地下資源が潤沢だからってしつこく言ってただろ!お前ら兄弟はほんっとどうしようもねえな!」
「今まで全然関係無かった区域なのによく覚えてるなあ、お前」
「情報、大事だろ…」
もう話したくないとばかりに命令書で顔を覆ったターレスからラディッツに視線を向ければ、つい先ほどの固い表情は消えていた。
どうやら、ベジータとナッパの任務内容に安心したらしい。
彼の兄はベジータを特別視している節がある。
ターレスの言う「王子サマ」は明らかな揶揄が含まれているが、ラディッツの言う「王子」は至極真面目な響きである。
カカロットにとってベジータはベジータなので、ラディッツが口にする「王子」は身分の呼称にしか聞こえないのだが、そう呼ぶラディッツが、時々別人のように凛として見える。
理由はさっぱり思いつかない。
聞いてみれば何か分かるのだろうが、ラディッツの思うところがどこにあろうとも、カカロットにとってのベジータはやはりベジータなのだろうと彼は思った。


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